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めずらしく経済の本を読んでみた

「円高の正体」(安達誠司著、光文社新書)
経済関係の新書は毎月毎月たくさん出ているけど、あんまりまともに読んだことがなかった。

が、購読してるブログの2つで同じ本が紹介されていたのと、twitterのタイムラインでもちらほらこの本について言及されていたりしたのとで、どうやらまともな本らしいという気がして、購入して読んでみることにした。

この本のタイトルにもなっている「円高」だけど、正直外為のこととかよく分かってないので、日本って地震もあったし景気も悪いのにどんどん円高ばかりが進行して、なにやら円高というのは悪い指標らしいぞと感じるのだけど、その一方でユーロが危機になるとさらにユーロが下がったりして、え?じゃあ経済悪くなると通貨は安くなるの? 円はそれよりは良いということで高くなってるってこと? …てな具合で円高がいいことなのかどうかよくわかんない。

ユーロ危機のヨーロッパや高失業率のアメリカに比べれば、まだまだ日本のほうがいいから円高なんじゃないの?ってのも時々耳にするけど、ニュースで見る数字だと、成長率なんかは日本より欧米の方がだいたい良いしね。

日本って山のように借金あるのに、その国の通貨ばかりが高くなるこの状況って何なんだろう、ってのは、経済のことに疎いからほんと不思議。ニュースの解説とかで、この円高の状況をストンと納得させてくれる説明に出会ったことないし。

で、読んでみた。
新書らしく、すごく読みやすいし、経済わからなくても分かりやすい。
それと、話が数字や実例に基づいて説明されてるので、観念的なゴリ押しの論法でなくて受け入れやすい。
あと、他人の悪口を言いつつ、その反論を書き連ねることで自説を補強するみたいな感じがないのもよかった。いくつか他者の著書に言及してダメだしてるところもあるけど、自説に基づいた根拠のある指摘だから素直に肯ける。

で、結局、結論として現在の円高状況ってのはダメだ、というのはよくわかりました。
そしてなにが円高を引き起こしているかの説明にも納得がいきました。そしてその対策についても。
要するにいまの日本の状況というのは、金融政策の失敗というか不作為の結果というか…。
もちろん、アタマのいい日本銀行やお役人の方々はこの本に書いてあるようなことはあらかた分かっていての現状なんでしょうけど、ということはこの現状をありがたく思っている人たちがいて、その人達の利益を毀損できないというブレーキが強力に掛かる力学が作用しているということに他ならないんでしょうね。
この本は、そういう力学については一切言及してないけど、円高やデフレの説明を読んでみれば、どういう人達が今の日本の状況を喜んでいるかは想像がつくようにはなってると思いました。

なんというか、これから働いて稼いで税金を払っていきますよー、という世代よりも、すでにがっつり稼いで蓄財済みで年金もらってあんまり税金払ってないけど投票にはよく行く、みたいな人たちのための構造になっているのかなぁ、とあらためて考えさせられました。